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金子峠とツクシ坂

帯那地域の魅力の一つ「山歩き・上帯那編」

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金子峠とツクシ坂

山歩きといっても今回紹介するコースは40~50年程前までは地域の人々の生活を支えてきた生活道です。上帯那地域から盆地に歩いて向かうルートは2ルート。

  1. ツクシ坂(通称ツクッ坂)
  2. 金子峠

現在はマイカーによる和田峠の行き来になりましたが、かつては通学・通勤、買出しまですべてこの道を歩いて盆地へと向かい、帯那へと戻って来ました。昨年秋、荒れ果てていた山道が復活しました。上帯那の人々が行き来した当時に思いを馳せながら皆さんに紹介したいと思います。

ルート
上帯那バス停-「花子とアン」ロケ地-昭和池-ツクシ坂-金子峠・積翠寺分岐-金子峠南分岐-金子峠・大正池

所要時間 約180分

5月10日(日)快晴。
上帯那バス停を9:20に出発。そのまま緩やかな上り坂を進むと左手に見えるのはNHK連続テレビ小説「花子とアン」の屋外ロケ地となった棚田の一角です。

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撮影終了後にセットは他に移転してしまい、今は看板が残るだけですが、古くからの石積みの棚田は人々の生活を支え、地域文化を育んできた貴重な資源です。400年以上佇んでいる姿を見て頂きたいと思います。

そこから約5分、その先に現れたのは古い観音様。上部には「上倉?」というような文字も見え、向かって右手には「文政 元 寅」の文字が見えます。調べてみると文政元年は戊寅(つちのえとら)の年にあたり、西暦では1818年になります。江戸・文化文政時代であり芸術・文化が花開いた時期です。この時代、甲斐の国は江戸幕府直轄領となっており、勤番制により老中直轄の支配体制が成立していました。江戸との行き来も盛んで、その影響を色濃く受けていたことが想像できます。この地にも江戸文化がもたらされたのでしょうか。お顔をみると、実に穏やかな表情をしています。その作りは、好々爺の風ですが、どうやら厚手の打ち掛けの様なものをまとい、手を合わせ(この手が大きい!)、心静かに何かを祈っている様子です。先人が何かの平安を祈って心のよりどころとしたのだと思います。

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その先には、またまた山あいの地の小さな棚田と、この季節気持ちの良さそうな木立が広がり、昭和池へとたどり着きます。

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昭和池は名の通り、昭和3年に竣工した灌漑用水用の人造湖です。一昨年改修工事を行い、現在も36㎥の貯水量で地域に農業用水を供給している貴重な水瓶です。

帯那地区は水資源が乏しく、安定した農業用水の確保が住民全員の悲願だったと聞いています。後に紹介する大正池とともに相次いで農業施策が実施され、地域発展を支えてきた貴重な歴史資産でもあります。

この昭和池をあとにしてゆっくり歩いて2~3分、先人・先輩が行き交ったツクシ坂入口に到着します。

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10:20ツクシ坂を出発。
この道は上帯那(旧千代田村)の「みずかみ・あかしば・あなぐち」の人々が行き交った道で真っ直ぐ下ると上積翠寺に出ます。

現在は、山梨県の「武田の杜」と連結し、和田峠にも連絡している山間遊歩道となっています。散策するには十分な道幅が確保され、山肌に茂る木々も枝打ち・間伐の手入れがなされ、この季節には木漏れ日と新緑を満喫することができます。

分岐点には矢印看板が設置され、随所に所要時間と距離を表示する看板も設置されています。

下り始めて40分程で最初の分岐点が現れます。真っ直ぐ進むと(一の森方面)上積翠寺へ、左手に進むと(鳥獣センター・北山方面)金子峠・和田峠方面へと向かいます。ここを左折して、金子峠方面へと向かいます。

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分岐を出発してしばらくすると、所々木々の間から甲府盆地が見下ろせるようになり、遠くに車の音も聞こえるようになってきます。

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20分程で「北山園地(ちょっとした東屋があり休憩できる)」に到着、小休止の後に金子峠に向けて出発しました。

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東屋を出発して30分程で、金子峠南分岐(左に向かうと塚原、直進すると和田峠、右が金子峠・大正池)に到着します。途中には塚原町を通り、相川に合流する不動沢、手入れのされた杉木立が現れます。ここを右に向かい金子峠・大正池へと向かいます。

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この峠道はかなりの急坂。平坦な道に出ると一息付ける思いがします。一気に登りきるのはちょっとツライかもしれませんが、成人男子の歩みで金子峠南分岐を出発して20分程(登り道で)で頂上に到着します。

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所要時間から推測すると、金子峠経由上帯那→甲府駅はおおよそ100分。帰り道甲府駅→上帯那は120分(上り坂を加味して)。

先人・先輩はココをひたすら歩き、盆地へと向かったことを考えると、その苦労が偲ばれます。険しい道中を登りきった峠から見下ろす盆地は足元直下にひろがり、正面左手には富士山がそびえたっています。そして、この近くに大正池(大正15年竣工、総貯水量52㎥)があります。
こちらも帯那集落の貴重な水瓶で、現在も田畑を潤しています。

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いつの時代に完成した道なのか、はっきりとした文献は見当たりませんが、「帯那は躑躅ヶ崎の背後を守る重要拠点だった」、「信濃との行き来は帯那―韮崎ルートが最短でそのための軍略道であった」といった話が地元では伝わっています。もしかしたら信玄公と帯那の関係は深かったのかも知れません。

当日も大正池の畔で休んでいると、この道を通って帯那から千代田湖、湯村へのルートを散策する方々にお会いしました。

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ここに紹介したものは、古くから地域の生活を支えた貴重な資源と素晴らしい自然環境、眺望が数多く残っています。是非多くの方々に散策して欲しいと思います。

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